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「 宇宙と人間のつながり 宇宙の見えない働きを探る 」  辻蘇南|読書感想 小坂航

  • 執筆者の写真: kosakawataru6
    kosakawataru6
  • 5月3日
  • 読了時間: 3分



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「 宇宙と人間のつながり 宇宙の見えない働きを探る 」  辻蘇南


私はあらためて、「人類はなぜ存在しているのか」という根源的な問いに向き合わされた。


宇宙はいまだ多くの謎に包まれているが、それを探るという行為そのものが、人類の根源と向き合うことにつながっている。


私たちが日々向き合う仕事や人間関係、人生の選択すらも、最終的には「この宇宙の中で自分は何をなすべきか」という問いに通じている。


つまり、宇宙という根源と向き合うことは、自分の生き方を明らかにする行為そのものなのだ。


自分は何のために働くのか。どう生きるべきか。


その方向性を定める軸として、「宇宙と人間のつながり」を、私はこれからの生き方の根幹に据えていきたい。


本書では、宇宙の摂理がいくつか挙げられていた。


たとえば「宇宙は調和ある秩序であり、相互依存の構造を持つこと」や、「宇宙は今もなお拡大し続けており、その力は創造性と前向きさの象徴であること」などだ。


また、宇宙が人類に“精神”という特別な働きを与え、それを“認識する力”を授けたという視点も印象的だった。


人類は、文明を築く中でこの宇宙の存在を「神」と表現したり、宇宙と自己を一致させるために、ヨーガや禅、梵我一如といった思想を生み出してきた。


その根底には、宇宙と人間が本来一体であるという感覚、すなわち「宇宙精神」の自覚があったように感じる。


哲学者・西田幾多郎はこう語っている。

「神は宇宙の根本、宇宙の統一、それも具体的統一であり、生きた精神である」


この言葉は、宇宙精神の本質を端的に示しているように思う。


そして現代、物質偏重の文明が限界を迎えつつある今こそ、東洋が重んじてきた“見えないもの”への感性こそが、宇宙精神に近く、これからの時代に最も必要とされるものだと思う。


ここで注目すべきは、東洋と西洋における思想の違いもまた、宇宙の働きの一部として生まれたという点である。


思想は単なる文化の産物ではなく、土地・気候・自然、つまり“宇宙環境”そのものが人間の精神を育てたのだと思う。


その代表となり得るのが、日本なのではないか。


かつて日本には、「和を以て貴しとなす」「神仏習合」といった、異質なものを調和させる精神性があった。


また、人類のみに与えられた、宇宙から降り注ぐ「愛・信・義」の精神、それを最も純粋に体現したのが武士道であると、執行草舟先生は語っていた。


まさに武士道とは、宇宙精神の結晶であり、目に見えぬ宇宙の意志を地上で体現した生き方だったのだ。


かつて三島由紀夫先生は、「天孫降臨をもう一度」と語られていた。


これは単なる神話の再演ではなく、宇宙精神を再び地上に展開すること。


すなわち、“真の霊性文明”への回帰を意味していたのではないだろうか。


私は、日本が生み出してきた精神的な遺産、武士道を未来に残していくことが、人類が再び宇宙と一体となる道をつくると確信している。

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