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「正伝 出光佐三 日本を愛した経営者の神髄」|読書感想 小坂航

  • 執筆者の写真: kosakawataru6
    kosakawataru6
  • 5月1日
  • 読了時間: 2分


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「正伝 出光佐三 日本を愛した経営者の神髄」


出光佐三が社是として掲げた「士魂商才」。


これは、単なるビジネスではなく「商売としての道=商道」を体現した姿であり、その精神のベースには、石田梅岩が説いた石門心学や武士道が息づいている。


玉音放送を拝した2日後、冷静に日本の将来だけでなく、日本の歴史まで振り返り、国民として為すべき指針を示し、社員に訓示を与え、終戦後の第一歩を誰よりも早く歩み出した存在とも言える。


日章丸事件はまさに士魂商才を体現したものだった。


イランは当時世界最大の石油資源を、イギリス資本の石油メジャーによって管理されていた。


1951年、イランは石油の国有化を宣言したが、これに反発したイギリスは軍艦を派遣し、「石油を買い付けに来たタンカーは撃沈する」と国際社会に表明した。


その中で、出光佐三は「イギリスの行為は正当性を欠く」として、日章丸をイギリス海軍から隠す形でイランに到着させ、石油を積載。


武装を持たない一民間企業が、当時世界第二位の軍事力を持つイギリス海軍に反発した事件として、世界中で報道された。


出光佐三の覚悟、そして命懸けで船に乗り込んだ船員たちの存在。

それは、今もなおイランの人々の心に、日本への深い感謝として刻まれている。


この日章丸事件は、現代に生きる我々の魂に力強く問いかけている。


現代のビジネスは、グローバリズムの波に飲まれ、無限の経済成長を前提とした在り方に染まっている。


そんな時代の中で、出光佐三の魂に触れたことで、本来「商売とは何か」という根源的な問いが、胸の奥深くに突き刺さった。


日本がここからもう一度立て直すには、出光佐三のような大人物の魂と触れ直すことが、何よりも必要だと思う。

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